夕焼けの唄

いつものことだが、電車は満員だった。
そして、いつものことだが
若者と娘が腰をおろし、としよりが立っていた。
うつむいていた娘が立って、としよりに席をゆずった。
そそくさととしよりが座った。
礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。
娘は座った。
別のとしよりが娘の前に、横合いから押されて来た。
娘はうつむいた。
しかし、又立って、席をそのとしよりにゆずった。
としよりは次の駅で礼を言って降りた.
娘は座った。
二度あることは、と言う通り
別のとしよりが娘の前に押し出された。
可哀想に、娘はうつむいて
そして今度は席を立たなかった。
次の駅も、次の駅も
下唇をキュッと噛んで、身体をこわばらせてー。
僕は電車を降りた。
固くなってうつむいて、娘はどこまで行ったろう。
やさしい心の持ち主は
いつでも、どこでも、われにもあらず受難者となる。
何故って、やさしい心の持ち主は
他人のつらさを自分のつらさのように感じるから。
やさしい心に責められながら
娘はどこまでゆけるだろう。
下唇を噛んで、つらい気持ちで
美しい夕焼けも見ないで。
(切り絵の合間のいっぷくでした。長々とすみません)


この記事へのコメント
う~む・・・いい詩です!!
「年寄りに席を譲らない」・・・よく耳にしますが、譲ってもらった年寄りから“挨拶”もない・・・このモラルの無さも大いに問題かと思います。
Posted by 和の森 at 2006年09月18日 22:31
下唇をキュッと噛む想いじわぁ~と感じちゃいます。。。。
Posted by makotaku at 2006年09月18日 22:49
和の森様
そう!おおいに問題ですよね。
Posted by ichio at 2006年09月19日 02:01
makotaku様
うまく言えないけれど、只この詩が好きです。
心に、じんときます!
Posted by ichio at 2006年09月19日 02:04
こういう事よくあります。
席が空いたとき、周りを見て 自分が座っていいか考えます。
お年寄りが乗って来たら、座れるか様子を見ます。

だから、席を譲ったら その場を離れる事にしてます。
...って、いつも席を譲る「いい人」ではないですけどね。

難しいです。
Posted by サクラ at 2006年09月19日 12:55
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夕焼けの唄
    コメント(5)