ひとつのりんご
冬枯れの散歩道、話す息も白く
お互い冷えきった、手を繋ぎながら
とりとめの無い、話に興じる
ふと目をやると古びた果物屋さんの
店先に、今は珍しい紅玉のりんごが
彼女の目線が、一瞬懐かしさに、微笑む
気ずかないふりをして
おばちゃん、そのりんごふたつ下さい。
まだ、そのりんごは白く粉が吹いて、
ひとつ、50円だよ!
いま、紅玉売れないから安いのよね、
2つで、100円。 ありがとね。
茶色の紙袋に入れてくれた、りんごの
ひとつを取り出して、その日着ていた
アーガイル柄のセーターの裾で白い粉を
脱ぐって君に渡す。
君は笑顔で、受け取って頬張りつく!
君の口からりんごの汁がこぼれ落ちる。
昨日、見た夢。